A  coincidence  HAPPY

 

深夜1時。
アルヴィス内は昼間の訓練の賑やかさも、大人達の叱咤する声も夢の痕のように、
シンと静まりかえっていた。
データ解析資料の作業をようやく終えて、軽い眠気を感じながら自室へと戻る少年の
足音だけが艦内に響いていた。

「すこしはりきりすぎたか・・・」

長時間コンピュータと向き合っていたためか、目にじんとした重みを感じる。
最近は仕事もはかどり、精神も安定している。

「ちゃんと自分の思ってることを伝えられるようになったから、か・・・?」
すべてとは言わないけれど・・・。
互いのことを理解したい、もっと知りたいという気持ちが自然と言葉にでてくるようになった。

他愛もない会話ができるようになった―・・・。

それはみな、一度は自分の元を去り、再び一緒に戦おうと手を差し伸べてくれた幼馴染みの
おかげ・・・・・・

「救われているな、僕は・・・」

救いたいと、願ったのは自分だったはずなのにな。
いつも気つ”くと、支えの手をのばしてくれているんだ、あいつは。

「不思議な奴だ・・・」

くすっと微笑みながら、広い休憩室を横切る瞬間。
ふと、ソファの並ぶ方から人の気配を感じ、目をやった。
「あ・・・」
眠気も吹き飛ぶ衝撃が全身を走った。
総士の目に飛び込んできたもの―。それは、今日のファフナーの訓練を共にした幼馴染みの姿。
真壁一騎だった。
ソファに深くもたれ掛かり、眠っている様子だった。

なぜ、こんな時間に・・・?

疑問が浮かぶより先に、総士は一騎の眠るソファへと歩み寄っていた。
「一騎・・・、一騎・・・」
肩に手をかけ、そっと揺すりながら声をかける。
すると眠っていた眼がうっすらと開かれ、目の前の人物に気つ”く。
「・・・ん?・・・そぉし?」
むにゃむにゃと可愛く言われ、総士は一瞬思考が停止した。

・・・・なっ、何を思った・・・?

動揺する自分を抑えようと、
「こんな所で寝てたら風邪をひくぞ」
と、一騎に投げかけた。
それに素早く反応した一騎はあたふたした様子で、
「ごっ、ごめんっ」
ついいつもの癖であやまってしまった。
いつものようにあやまられた総士はため息をつき、話を変えるように一騎に問いかけた。

「家には帰らないのか?」
「え?・・・今何時だ?」
「もう午前1時を回ったところだが」
「午前1時・・・って・・・えぇっ!!!?」
自分はそんな時間まで居眠りをしてしまったのかと、さっきまでとろんとしていた目は
ぱっちりと見開き、口はあんぐりと開いたまま。
ショックはかなり大きいらしく・・・。
その表情に総士も気つ”いた。

「まさか、気つ”かずにずっと寝てたのか・・・?」
「あ・・・うん・・・。みたいだ」

もう笑うしかないと、一騎はへらっとした笑みを総士に向けた。
その笑顔が切なくて、おきざりにされた子犬のような一騎の状況を
総士は救いたくなった。

「今から帰るなら途中まで一緒に行くが・・・」
不器用ながらに懸命に発した一言。
それに気つ”いてか、今度はいつもの素直な笑顔をみせる一騎。
「いや、いいよ。今日はこのままここで寝ることにする。
帰っても誰もいないしな。たいして変わらない」

今日は父はアルヴィスへ泊まると言っていたことを思い出した。
一瞬よぎった食事の心配はなくなったと、少し安堵した表情になった。
「そうか・・・」
島の夜は暗く、その中を帰すのは少し気がかりだった総士もまた、安堵した。
仮にも男の一騎は、何も心配はいらないだろうとは思うけれど・・・。
「悪いな、総士。気つ”かってくれたの、ありがとな」
「いや・・・」

少しの沈黙―。

「あ、じゃあ、俺また寝るからっ・・・お前も早く寝ろよ」
「ああ・・・」

このまま総士ともっと話をしていたいという気持ちもあったけれど・・・。
自分のことでこれ以上総士の睡眠を妨げてはいけないと、一騎はそそくさと寝る体制に
入ろうとした。すると、
「一騎」
呼び止めるように総士が言った。
「よければ僕の部屋に来ないか?ここは少し冷えるから・・・」
ここのソファよりは寝心地もいいはずだ、と付け加えて。
「え・・・いいのか?」
「ああ」
何もない部屋だがな・・・と、この間一騎に言われたことを繰り返してみせた。
「あ」
もしかして気にしてたのか、なんて考えるとおかしくて笑ってしまった。
総士もつられて笑った。
「じゃあ、ごめん。迷惑かける」
「気にするな」
そう言って部屋へと向かう総士の後を、一騎もついていった。

 

迎え入れられた久しぶりの総士の部屋。
相変わらずの“何もない部屋”は、以前来た時と変わった様子もなく妙に落ち着いた。

毛布を持ってくると言って、一人部屋で待たされている一騎は、総士のベッドへと目を
向けた。
自宅では見慣れないふかふかとした寝具。
真っ白なシーツに包まれた厚みのあるマットレスと普段自分の使う布団との厚さを
比べてしまうと、どうにも切なくなってしまうけれど・・・。
目の前にするとそのふかふかさを体感せずにいられなくなってしまうのは、幼い頃から
友人の家で見てきた密かな憧れからかもしれない。

「ちょっとだけ」
と、総士のベッドへ腰掛ける一騎。
そして全身を弾ませた。
ぴょーんぴょーんと、リズムよく体が浮く感覚に楽しさを感じてしまう。
ふかふかさもちょうど良く、自分のではないのに嬉しくなる。
「やっぱいいよなぁ・・・ベッド」
「なら、使っていいぞ」
「!!!!?」

声のした方を即座に振り向くと、入り口の壁にもたれかかる姿勢で立っている総士がいた。
手にはきちんと毛布が抱えられ、くすくすと笑っている。


「おっ・・・お前っ、いつからっっ」
「一騎が嬉しそうに跳ねてるあたりからか?」
「―−−−−っ!!!」

ベッドでぴょんぴょんと嬉しそうに跳ねていた自分を想像すると顔から火が出るくらい
恥ずかしくて。しかもそれを総士に見られていたという事実に一騎はただただ真っ赤に
なっていた。

「あははっ」
「・・・・・・・」
「はははははっ」
「・・・そぉしっ!笑いすぎだっ!!」

やまない総士の笑い声にも恥ずかしさが一層募り、涙目になって叫んだ。

「あははは、悪い・・・っ」
総士もまた、笑いすぎたせいで潤んだ瞳になっていた。
それがとても綺麗だと感じた。

そういえば、総士の笑い声を聞いたのは何年ぶりだろう・・・と、ふと考えた。
総士が笑ってる・・・しかも、自分のことでこんなにも笑顔を見せてくれたことが嬉しくて・・・
自分の怒りはどこかへ消え、安心した気持ちになった。

「あは・・・はぁ・・・笑った」
「やっとおさまったかよ・・・」
と、少しふくれた、でもどこか可愛い一騎の声。

「ああ・・・笑い死にするかと思った」

キラキラとした笑顔だった。

その瞬間ドキッとしてしまった自分の胸の高鳴りを、一騎は必死に隠した。


「ベッド。使っていいぞ、本当に」
「いっいいよ!ソファで・・・っ」
「? 遠慮してるのか?」
「ちっ違・・・うわっ」

バサッと毛布をかけられ、ベッドに体ごと押さえ込まれた。
視界は真っ暗で何がなんだかワケがわからず・・・

「ちょっ、総士っ」
必死で毛布をかきわけ出口を探した。
ぼふっと毛布から顔を出すと、目の前には総士の顔があり、またドキッとした。

「今日も朝早いんだ。早く寝ろ」
と、まっすぐな瞳で静かに言われ、返す言葉を封じられた気がした。

いつのまにか一騎はベッドにきちんと寝かされていて、
「どんな寝かしつけ方だよ・・・」
と、心の中でつっこんだ。

束ねた髪を解き、制服の上着を脱いで寝る支度を進める総士を見つめ、
「あ。でも、お前はどこで寝るんだよ?」
ふとした疑問。それはベッドを借りてしまった一騎には大事な事で。
「?ソファで寝るが・・・」
「え!?」
「え!?って一騎。一緒に寝るわけにもいかないだろう?」
「あ・・・でっでも」
シングルベッドなんだ、それは・・・と言われ、余計に申し訳なくなってしまった。
「ご、ごめんっ。あ・・・ありがとうな、総士」
「ああ・・・消すぞ?」
「ん・・・おやすみ、総士」
「おやすみ、一騎・・・・」

フッと部屋は暗くなり、しばらくは何も見えなかった。
二人ももう話そうとはせず、その静かな時を感じていた。

暗闇に慣れた瞳はだんだんと天井を映し、そっと首を横に傾けた一騎の視界には
総士がいた。
一つの空間に二人だけがいる・・・。
それはジークフリードシステムと繋がる時もそうだけれど。
でも、それとは違う・・・もっと自然に相手の存在を感じている、今―。
それは当たり前のこと。でも、未だに「夢」のような感覚で・・・。

二人はまだ、歩き始めたばかり―・・・

さっきのキラキラとした総士の笑顔が浮かぶ。
胸がきゅぅっと締め付けられた。
苦しさに体を縮ませ、シーツに顔を埋めると総士の匂いがした。
それがとても心地よくて、それでも心臓はとくんとくんと鳴っていて・・・

なんだか眠れそうにないかも・・・・
と、潤んだ瞳は暗闇で輝いた。
理由をぼんやりと考えながら・・・・でも、今は総士が譲ってくれたベッドで眠ろうと
一騎はゆっくりと目を閉じた。


急に近つ”いた距離に舞い上がってるだけなのかも・・・な・・・
お前も・・・そうなの・・か・・な・・・・・・

 

もう一つ、輝く瞳があったことを知らずに、一騎は静かな眠りについた。

 

END


いまさら発展恋話ですかいっ!とつっこまないでください。わかってます・・・!!(汗)
ただちゃんと一から書きたかったのです〜(>_<)
いや、その一はかなり前なんじゃないかとも思うのですが・・・;(自爆)

文才がほしい・・・っ!(切実;)
最初は総士寄りな視点だったのが、
最後はほとんど一騎視点になってしまいもうごっちゃごちゃ。(泣)
駄文ばんざい・・・っ(TへT)そしてごめんなさい・・・。

ちよ的には・・・ベッドでイチャイチャできたから満足ですっv(殴)
(今度は深くいきたいですね!←懲りない/汗)

読んでくださってありがとうございました!

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